カテゴリ: 債務整理を自分自身で行うことはできるか
その①利息制限法への再計算について
債務整理のからくりについては既に記事にしました。
では、自分自身で、消費者金融会社に取引履歴の開示請求をして、利息制限法への引き直し計算さえすれば、弁護士・司法書士に依頼をしなくても自分自身で交渉できそうな気もします。
もちろん理屈上では、債務者個人で交渉することも可能だと言えます。しかし、現実はなかなか上手くいかないでしょう。
個人で消費者金融会社と減額や過払い金返還の交渉を行うことはなかなか至難の業です。
その代表的な理由をまとめてみました。
≪利息制限法への再計算について≫
債務整理を行うには、利息制限法への再計算が不可欠です。
かつて多くの消費者金融会社は、(旧)利息制限法以上、(旧)出資法以下の金利帯で営業を行っていました。その取引を過去に遡って、利息制限法金利で再計算を行い、その金額を主張することで債務の減額を図ります。
しかし、この再計算方法を行うには様々な手法があるので、解説してゆきたいと思います。
(このことを説明するのにわかりやすいので、あえて利息制限法、出資法共に、改正貸金業施行前の旧法を例にしました。)
※参考
- 利息制限法(旧)
~10万円未満・・・・・・・・・20.00%
10万円以上~100万円未満・・・18.00%
100万円以上・・・・・・・・・ 15.00%
(遅延利息は1.46倍)
- 出資法(旧)
・・・・・・・29.2%以内
(これを超えた場合は刑事罰の対象になります。)
- 100万円未満の取引は全て00%、100万円以上は全て15.00%での再計算
通常の取引は遅れた日数については遅延利息が計上されます。(20.00%、18.00%、15.00%のそれぞれ1.46倍)一つ目の手法は、仮に取引中に遅れた日数が存在しても、遅延利息を設けずに、全て20.00%、18.00%、15.00%で再計算を行う手法です。
債務者(顧客)にとって一番有利な再計算手法です。
- 遅れた日数分は遅延利息で再計算
2つ目の手法は、取引中に延滞した分は各利率の1.46倍の遅延利率を計上する手法です。
全て20.00%、18.00%、15.00%で再計算を行う手法に比べれば、減額額は減少します。
- 期限の利益を喪失させて再計算
消費者金融会社と契約する際の、契約約款には必ず、「期限の利益の喪失」に関する条項が盛り込まれています。「期限の利益」とは、期限到来まで債務の履行をしなくても良いという債務者(顧客)の権利のことを指します。
この期限の利益を喪失すれば、分割払いは反故となり、直ちに、残債務全額を弁済しなくてはいけなけなくなります。
そして、全て弁済するまでは、遅延利率が計上されることになります。
また、この期限の利益を喪失する要件として、「会員が弁済金の支払を1回でも遅延したとき」とういう条文が定められていることがほとんどです。
よって毎月の分割払いを1回でも延滞していたら、本来、消費者金融側はその時点で、期限の利益を喪失させて、全額請求することも可能な立場なのです。
通常の取引をしている場合には、1度延滞したくらいで、期限の利益を喪失させて全額返済を迫ってくる業者はほとんどありませんが、利息制限法への再計算を行う場合には、少しでも、残元金の確保をするために、期限の利益を喪失させて全額請求を行っていたという建前で、最後に延滞した回から以後の利率は、全て遅延利率を計上して計算するといったことも行ってきます。
この計算を上手く活用されると、利息制限法で再計算しても、大幅に減額額を抑えられてしまいますし、下手をすれば、通常に取引をしていた場合の残高よりも多くなってしまうことすらあります。
このように利息制限法への再計算は、やり方次第で、残元金は大きく変わってきてしまいます
もし、弁護士・司法書士を介さずに債務整理をするならば、自分自身に有利な引き直し計算を行って、先方の主張する再計算方法でなく、自分の再計算の方が正当だということを論理的に主張しなければなりません。
正直、素人の方ではなかなか困難だと思われます。